しせき 様
「左上の奥歯が急に欠けて、しみるようになった」ということで、大変な思いをされたと思います。しかも、右に治療中の歯があり、通っている間のことで、納得できないのかと考えます。
歯科の治療についてはいろいろな方法があります。たとえば、最初の来院時には
レントゲンを含め
歯槽骨の落ち具合、
歯肉(はぐき)の
炎症、歯の
動揺度(はのゆれぐあい)などのデータを取り、キッチリ診断を下してから治療をすることがあります。
このようなときには比較的「しせき」さんが感じたようなことは起こりにくいものです(決してゼロではありません)。しかし、現在歯科医院に来られる患者さんの多くは歯のどこかに問題を抱えて来院し、「まずここが痛いのでそれを治してほしい」という訴えが多いのも事実です。その場合は他の歯についてはその歯の治療が終わってから点検するような手順になります。多くの歯科医師はできればこのような「間に合わせ」の治療はしたくありませんが、現在の日本人はとても忙しく、「歯科治療に時間を掛ける」という一番大切なことを忘れています。
アメリ政府の高官(相当な地位の方でした)が日本に来て、政府の要人や経済界の主だった人と数日間分秒刻みの会見をこなした後、帰国のために大統領専用機に乗り込み、上着を取った後の最初の一言が「日本人の口はどうしてこんなに汚く、くさいのか」ということです。
アメリカ人はどんなに忙しくとも「
口腔を含め年間の健康診断の予定をまず入れて、それから他のスケジュールを入れる」と聞いたことがあります。日本では
口腔のチェックアップに熱心でないことがこのような問題を起こし、経済的にはどんなに栄えていても、文化的には発展途上国のような扱いを受けるのは致し方のないことかもしれません。
余談になりましたが、貴方が、
口腔すべてのデータを取ってもらい、診断をした後にこのような症状が出たなら、とても見つけにくい場所にあった
う蝕(
虫歯)だったのかもしれません。このようなことが全くないわけではありません。
しかし、問題の歯があり、それをまず治療してもらっていたなら、このようなことはある程度仕方がないことかもしれません。いずれにしても、ご本人には大変「ショック」なことだったと思います。今かかっている先生にきれいに治してもらい、早くよくなられるように願っています。