こうおつ 様
う蝕(
虫歯)の治療をしてもらったところの不安。お気持ちはよく分かります。しかし、歯科医師の側からみると、お書きになっていることについては「心配ないのではないか」という気がします。
ご質問は2つ。
> 1。詰めなおしといっても以前よりも深く削ったのではないかということです。
お答え。 鏡でご覧になって、「以前よりも歯の掘りといいましょうか、深くへこんでいるように感じました」というのは、奥歯(大臼歯)というのは、天然歯でも山と谷があり、上下の山と谷が互いにかみ合って食べ物をちゃんと噛み切り、すりつぶせるようにできています。必要があり平たくつめることもありますが、食事をするためにはこの山と谷がうまくかみ合うことが必要です。そのためには詰めるのも時間がかかり、調整にも貴方がしてもらったように丁寧にする必要があります。ですから、「治療後も冷たいもの、温かいものでしみていない」とお書きになっていることからも、私には「深く削りすぎたのではない」と思えます。この歯科医師はとても丁寧に治療してくれたのではないでしょうか。
> 2。
レントゲンや柄の部分でカンカンと触診してなんともないのに、削ってみたら
虫歯だった、ということはあるのでしょうか?日本の技術で
レントゲンで虫歯が発見できないとは思えないのです。
最近の
レントゲンはお書きのように性能はあがってきています。ただ、立体のもの(3次元)を平面(2次元)で見るというところに完全でないところがあります。
CTもありますが、放射線量のことを考えるとむやみに
CTをとるということはお勧めできません(診断にはとても有効なので、必要なときにはとても良い診断手段です。むやみに恐れる必要はありません)。これらのことを総合的に考えて、
レントゲンである程度のめどを付けておき、古い
詰め物を除去しながら中に細菌感染がないかどうかを見ながら必要な部分を除去する。というのは現在では最も良い治療法だと考えます。歯の構造はとても複雑で、一番外側には「
エナメル質」というとても固い層があります。次に
象牙質、その次に
歯髄腔(神経や血管が入っている)という構造で、あなたの場合はこの
エナメル質が侵されて、
象牙質というところまで細菌が入っていたのだと考えます。そのとき、細菌が近づいてきたのを感じた身体は
歯髄腔にCa(カルシューム)を沈着させ、細菌が
歯髄腔に入るのを防ぎます(この時点では、柄の部分でカンカンとしても反応がないことが多いです。もっと進むと細菌は神経のところまで到達して神経は死んでしまいます。こうならないためにも
象牙細管に入った細菌を除去するのは神経を守るためにも必要な治療です)。それで、ご自身では「何もない」と思われていても、その
象牙質(その中の
象牙細管というとても細い穴)には細菌が入っていることがあります。それは歯を削って細菌を染めて、その染まった細菌を削り取るという方法で健康な歯の面を出して、そこに穴を埋める材料を詰めてもらいます。
以上のようなことから、貴方のしてもらった治療はとても納得できる治療法だと思います。
ぜひ安心しておいしい食事をなさってください。