第6回講座 歯周病(歯槽膿漏) 1

1.歯周病(歯槽膿漏)セルフチェック

歯周病歯槽膿漏)の危険度をチェックしよう!!

歯ぐきの状態点数
1歯ぐきの色がサーモンピンクのきれいな色である。0
2歯ぐきが赤く(あるいは紫色に)腫れている。5
3歯ぐきが‘むずがゆく’、歯が浮く感じがする。5
4リンゴをかじると、血が出てくる。5
5口臭がある。10
6朝起きたとき、口の中がネバネバしていて、気持ちが悪い。10
7虫歯がないのに、水を飲むと‘しみて’、気持ちが悪い。10
8最近、歯が長くなったように見える。歯と歯の間に隙間ができた。10
9歯ぐきが腫れて、プヨプヨする。10
10歯ぐきから自然に血が出ている。10
11歯が動いて、ものが噛めない。10
合計

貴方の歯周病歯槽膿漏)の危険度は、何点でしたか?

  1. 0点

    あなたの歯肉(歯ぐき)は、現在健康です。今後とも検診を受けて健康維持に努力してください。

  2. 5点~25点

    歯肉(歯ぐき)の状態は感心しません。早く歯科医院でチェックを受けてください。

  3. 26点~49点

    歯肉炎あるいは歯周炎の疑いがあります。至急歯科医院でご自分の口腔状態を確認してもらい、早期に治療を受けてください。

  4. 50点以上

    歯周病(歯槽膿漏)が相当進行しています。至急歯科医院で治療を受けてください。放置すると歯を残すことが困難になる可能性があります。

2.歯周病(歯槽膿漏)とは

歯肉炎を起こしている歯茎

左の写真は、10数年前に歯の治療が終わったと思い、その後チェックを受けることなく、別に異常も感じないでいた患者さんです。和歌山県では40歳、50歳、60歳、70歳の節目に県庁や、各郡市から検診の案内が送付されます。その案内を持ってこられた患者さんです。ご自身では全く気がつかないうちに、歯を支えている骨がなくなって、歯肉(歯ぐき)に炎症がおこりました。もう少しで歯を失うところでした。

3.健康な歯肉(歯ぐき)と病気の歯肉(歯ぐき)

歯周炎にかかっている歯茎

自分では気がつかないうちに、歯周炎にかかっていた状態です。

治療を受けて歯周炎が改善した歯茎

短期間に、歯科衛生士の歯ブラシ指導とプロフェッショナルケアで改善された歯肉(歯ぐき)の状態です。

4.骨吸収像(レントゲン)

歯周炎患者のレントゲン写真

上記と同じ人のレントゲン像です。歯を支えている歯の骨に吸収が見られます。
また、赤い矢印で示したところの根の表面に、深いところまで歯石が見られます。(バラの刺のように、がたがたしているのが歯石です)。

歯石除去後の歯周炎患者のレントゲン写真

このレントゲン像は歯科衛生士が根の表面をきれいに掃除して、先ほどの歯石が見られなくなりました。上記のレントゲンの黄色矢印で示したところの骨に皮質骨という白い骨が見られないのですが、掃除をしたあとの左のレントゲンでは、緑の矢印で示したように、レントゲン像で白い線が見えます。この白い線が皮質骨という固い骨です。健康になってきている証拠です。

歯周炎の治療から半年後のレントゲン写真

歯科衛生士の指導後、半年が経過したレントゲンです。皮質骨がさらにしっかりとしてきているのが、わかります。これが、歯科衛生士さんのプロフェッショナルケアの効果です。

5.歯周病(歯槽膿漏)の進行

健康な歯茎

健康な歯肉(歯ぐき)の状態です。

歯肉炎を起こした歯茎

歯肉炎:歯を取り巻く歯肉(歯ぐき)だけが炎症になっている。歯肉(歯ぐき)に少し炎症があり、このまま放置すると、どんどん深部へ病状が進行するような状態です。

歯周炎になった歯茎

歯周炎:歯を支える骨が破壊された状態で、歯肉(歯ぐき)の炎症がどんどん奥へ入り歯を支えている骨までやられている状態を示しています。このような状態になっても本人は気づいていないことが多く、「自分は歯に関しては自信がある」と言って、歯科に何十年も通っていない人によく見られます。不思議なことに、歯周病歯槽膿漏)にかかっている人の歯は、う蝕虫歯)にかかっていないことが多いのです。 

6.立体的に骨の吸収を見る

歯周病で顎の骨が破壊された人のレントゲン写真

40歳代の人のあごのCT像です。歯周病歯槽膿漏)で歯を支える骨まで破壊されています。
根っこがほとんど見えて、骨が支えていないのがよくわかります。こんな状態になる前に、早く手入れをすれば歯が抜けないで、長く自分の歯で咬めます。

7.どうして骨まで破壊されるの?

私たちの口の中には、500種類以上と言われる微生物(ウィルス、細菌、真菌(カビ)、原虫など)が住んでいます。この中には人間にとって、善玉もいれば悪玉もいます。悪玉が簡単に体の中に入らないのは、体の防衛力(免疫力、唾液による洗い流し、重層扁平上皮という保護機構など)が働いて、これら外来の敵と戦ってくれています。

しかし、歯の周りをいつも汚くしていると、防衛力が追いつかず、それに対応するためにいろいろな変化が起こります。歯肉(歯ぐき)が赤くなっているのは、外来の敵と私たち自身の細胞などが戦っている結果です。外来の敵が多くなると、さらに深く、特に骨の中に敵が入ると大変なことになるので、私たち自身の「破骨細胞」という細胞で自分の骨を壊し、敵が骨の中に入らないようにします。これが歯周病歯槽膿漏)で、細菌などによって骨が溶かされるのではありません。

歯周病歯槽膿漏)が悪化してくると、歯周病菌(歯周病の原因菌)と言われるような微生物が増えてきます。これら微生物の細胞の細胞壁にエンドトキシンという毒素があります。それに私たち自身の防衛力である細胞のマクロファージとかリンパ球が反応して、その細胞が活性化することによって、プロスタグランディンとか破骨細胞活性化因子というような化学物質が産生されます。そのような物質に反応して、破骨細胞が働き始めます。そうすると、歯を支えている歯槽骨の吸収がどんどん進んでいく、これが歯周病歯槽膿漏)です。

破骨細胞によって歯槽骨の吸収が進む様子

このように、口の中の病気は、外来の寄生体(細菌など)と宿主(自分の体)のせめぎあいです。自分の全身状態も良くし、悪玉が寄り付く隙を作らないようにすることが大切です。しかし、いろいろな全身の病気があり、そのために口の中の病気が悪化することがあります。体の状態をできるだけ早く、できるだけ良い方向へ向けるように努力しましょう。